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狼.陛下の花.嫁の二次創作です
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いい夫婦の日記念SS
2015年11月25日 (水) | 編集 |

SNSのコミュニティーでいい夫婦の日というトピックがあったのですが、このコミュがこのトピックを持って永久凍結ということで、それまでは読み専だったのですが、最後にはちょっとでも参加したいと思って書けない状態で潜水中で潜っていた頭の中から無理やり引っ張り出したお話。
ひどい駄文だなぁ。

設定:本物夫婦


「陛下、あの、ちょっとお願いがあるのですが…」
「何?君のお願いなんて珍しいね。何でも言って」

「…その、明日はいい夫婦の日っていうらしいのでちょっとの時間でもいいんですが、下町に普通の夫婦って感じで遊びに行きたいんです。
いつも陛下にもらってばかりなので、何か陛下に使ってもらえるものをプレゼントしたくて。
あの、一緒に選んで頂けませんか?」

「もちろん!ちょっとと言わず1日時間取れるように李順に言うから大丈夫だよ。
僕も夕鈴に贈り物したいな。
いつもいらないっていうけど、下町で買えるようなものならそんなに高価じゃないし、お互いプレゼントし合うのはどうかな?」
「あ、はい!そうしましょう」 

普段なら無駄遣いは断るところだが、いい夫婦の日だし、安くて実用的なものならたまには買ってもらうのもいいかなと夕鈴はその提案を受け入れた。

翌日、2人は庶民らしい着物に着替えて下町にお忍びに来ていた。

「やっぱり簪がいいかな?身につけてもらえるものがいいよね」
「あの、まずは陛下のものを選びたいんです。でも陛下に使ってもらえそうなものって浮かばなくて…」
「うーん、自分のものって何もこだわりもないし。特に欲しいものってないなぁ。」

やっぱり…と夕鈴はため息をついた。
本当はこっそり1人で選びにこようと思ったが何を買ったらいいのかさっぱり浮かばずでいっそ選んでもらおうと思ったのだが、買うものが見つからない。
途方にくれてなんとなくぷらぷらしていると、ある1軒の店が目に入った。

「これで夫婦生活は安泰!効き目はバッチリ!」

(あれ、何だろう?)
そう思った夕鈴はふらふらとそのお店に近づいていった。

気づいた陛下が微妙な顔つきで跡を追いかけて店に入る。

と、そこには色とりどりのきれいな液体の入った小瓶があった。

陛下は見た瞬間になんであるかは察したが黙っていると、夕鈴は全く疑いを持たずに店主に近づいていく。

「あの、これなんですか?」
「おや、これはまたかわいい奥方にイケメン旦那だね。
これは女性用の香油ですよ。夫婦の日に特別な香りをつけて楽しむのも奥さんの嗜みだよ。
あっちが男性用。あれは寝酒代わりに飲んでもらうものなんだけど、飲むと効果は絶大!
疲れも一瞬で吹き飛ぶよ」

「へええ」そう言って夕鈴は(陛下いつも仕事でお疲れだし、きっと栄養剤の入った寝酒ってことよね。たまにはゆっくり休んでもらえるなら、うん、いいかも)
と、なんの疑いも持たずに、それを買うことを決意。

香油は侍女さんがいつも選んで塗ってくれるけど、たまには陛下に選んでもらったものとかいいかも。


「陛下、これをお互い贈り合いませんか?」

ニッコリと微笑まれて愛しい妻にそんな風に言われたら、陛下には断る理由はもちろんない。
それどころか大歓迎だ。

(あれは媚薬入りの香油と、催淫剤入りの酒だよね。僕には効かないけど、媚薬入り香油を塗った夕鈴なんて美味しすぎる)

と、ニヤッと笑ってどの香りがいいかなと選び出した。

(あんなに嬉しそうに選んでくれるなんて。よかった)
と夕鈴は陛下を連れてきてよかったとホッとしていた。

そうして2人ともホクホクしながら王宮に帰った。

その夜は…当然ウサギを美味しく頂いた狼が。

よく朝、艶々と元気な陛下はまだ寝台から起き上がれない妻に向かって「来年もこれ買いに行こうね」と嬉しそうに言った。

「~~もう、絶対買いません!」と後悔した夕鈴は思いっきり心の中で叫ぶのであった。


**********

素敵な夫婦のお話を書きたかったのにこんなのしか浮かびませんでした。

このトピック、なんと書き込みが300を超えたんですよ。まだ11月中は書き込みが出来るように後夜祭をしてくれているのでこれからまだまだ増えると思います。
皆さんのSSが一気に読めてすごく楽しかった(o^^o)

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狩りシリーズ 梨狩り
2015年11月19日 (木) | 編集 |

さてさて、恒例の?狩ものSSです。
肉祭り以来の下町編ということで彼も出ます。

では…




「夕鈴、秋は梨が旬みたいだけど狩りに行ったことはある?」

「ありますよ!下町に梨園があって、毎年すごい人で賑わうんです。中々庶民には果物なんて贅沢なので普段は食べられないですけど、梨の時期だけはそこの梨園の方が特別に格安で提供してくれて、みんなで狩りに行きますね。
お祭りみたいで楽しいです。」

「ふーん、、僕も行きたいなぁ」


ということでまたもやお忍びで下町に国王夫婦が行くことになり、付き添いで方淵、水月の2人も付いて行くことになった。
李順はというと、

「流石に下町にまで付いて行くことは出来ませんから、今度も大人しく留守番してますよ。
陛下の代わりにみっちりぎっしり仕事してますから!!!」

(いやだから迫力ありすぎです。李順さん!)


「楽しみだなー。夕鈴とおでかけ♪」
「陛下、わかってると思いますが、くれぐれも時間は厳守してくださいよ。今回は他国からの訪問の合間を縫ってのほんのわずかな時間しか取れてないんですから。
夕鈴殿も問題は起こさないようにお願いしますよ!」

かくて、変な4人組で下町に繰り出すことになった。
一応方淵、水月の2人は離れて護衛兼お付き?の役割だったので梨園では距離を保つことになった。

「おい、水月、今度こそ李順殿に土産を忘れるな。妹への土産はまず後回しだ、いいな」
「わかってるよ。流石に今回こそお叱りを回避しないと。訪問団の宴の準備もあるからお小言をもらって時間がなくなるようなことは避けなきゃね」

「しかし梨の木は背が低いな。これではお妃のサイズじゃないと不利じゃないか。」

「あれ、夕鈴何してるの?」
「陛下、そんなやみくもに取ってはいけませんよ。
ここでは持ち帰りは3kgを超えないといけないんです。
量をたくさんとりすぎると、腐ってしまうことになるので、程よい大きさで程よい量でギリギリ3kgを狙うんです。」
「別にギリギリじゃなくても越えればいいんでしょ。」
「無駄使いはダメです!きっちりギリギリの量で3kgジャストで無駄なく選ぶのが主婦の腕の見せ所です!」

そう言うと、夕鈴は鼻息も荒く、梨園の奥へと進んで行った。


一方、補佐官2人はイマイチ要領が掴めず、これと思うと虫が食っていたり、少し青かったりして、中々いい梨を選ぶことが出来ずにいた。

と、そこへ
「おい、お前ら梨狩り初めてか?」
と声がかかった。

「さっきから見てりゃダメな梨ばっかり選びやがって。
いいか、梨ってのはな、まず手の平のサイズより少し大きめで、かつ色が濃く、しっかりと固めの物を選ぶんだ。」
「そ、そうなのか」
「アニキは物を見る目は確かだからな。任せとけよ、兄ちゃん達」

「おい、それはダメだ。よく見ろ。上の方が木に当たってるだろ。そういうのは傷がついてるからな。そこから腐るんだ。なるべく密集してないところのものを選べ」


と、何故か梨について指導され、その青年に連れられるままに自分とこの商店で売る梨の仕入れまで手伝うことになってしまった。


「よし!このくらいでいいわね。陛下、お待たせしました。そろそろ帰りましょう。あれ?方淵殿と水月さんは?」

「なんか几顎君に連れられて行っちゃったよ。まぁいいか。早く帰らないと李順が怒るし。あの2人がきっと李順の分の土産は今回こそきちんと持って帰るはずだから、これは僕たちで食べようね(^^)」

ルンルンと尻尾をふりながら(のように見える)相変わらずの小犬李翔という感じで終始嬉しそうにしている陛下についつい夕鈴もそうですねと2人で王宮に帰ってしまった。

元々護衛と言ったって、あの2人より陛下一人の方が十分強い。さして2人の重要性については考えていなかった。


「お早いお戻りですね。
陛下にしては合格点です。さて、宴までに残りの政務を片付けてくださいね。あまり時間がありませんよ。
ところであとの2人はどうしました?」

「梨園ではぐれてしまって。
でも時間までに戻ると最初に話してましたからじきに戻るはずです。」

…しかしその後数時間たっても2人は戻って来なかった。

「おい!水月しっかりしろ。早く帰らないと宴の準備に間に合わないではないか!」
「だって私は肉体労働には向いてないのに、君があの男にホイホイ付いていって手伝いなんか始めるから梨を荷車まで運ぶことに…
いたたた…
どうやら腰を痛めてしまったようだよ。」
「なんで今日に限って家人を連れてきてないんだ!全く軟弱な!とにかく急ぐぞ!」

そんなこんなで2人は閉門の直前にやっと下町を抜けて貴族街までくることができ、馬車を呼んでもらってやっと帰って来た。




「で、貴方方は今回の宴をなめてるんですか!準備の責任者であるお2人が間に合わなくてどうします!
貴方方を一緒に行かせたのは万が一にでも、陛下やお妃様が道草を食いそうになっても、きちんとそれを正して時間通りに連れ帰ってくれると思ったからですよ!
それなのに陛下が間に合ってよりによってお2人が遅れるとは!
それでも補佐官ですか。だらしない!特に水月殿!なんですかその姿は!」

結局ギリギリで宴の準備は出来たが、水月は腰が立たず、宴は欠席し、その後数日寝込んで出勤することが出来なかった。

結果的に方淵1人にその分の負荷がかかり、貧乏くじを引くことになった。



「アニキー、あの2人組。手伝ってもらってよかったんですかね?」
「あ?見ない顔だし、どっかの田舎から出て来て、これから商売でも始めるって2人なんじゃないか?ま、いい勉強になったろ」



そして、今回は梨は李順のお腹に入ったのか…は、遅れた2人からきちんと回収して持ち帰ったそう。

狩りシリーズ 桃狩り
2015年11月18日 (水) | 編集 |

さて、なんとなくシリーズになりつつある、なぜか李順さんが不憫になるこの狩りSS。
今回はどうなるでしょう。



「わぁ!すごい!一面の桃の木ですね」
「夕鈴がきっと喜ぶだろうと思ってね。今回も王宮専用の畑だから誰にも邪魔されずに獲れるし、
その場で獲ったのをすぐに食べられるよ」

前回のさくらんぼ狩りと同じ畑でさくらんぼの隣が桃の木だったので、夕鈴は夏になったら桃狩りをしたいと思っていたのだ。

「甘い匂いがしていて、すごく美味しそう♪」

「お妃様!いくら王宮専用とはいえ、柳方淵や氾水月はじめ、多くの官吏や侍女がいるのですからくれぐれも妃らしく振る舞うことをお忘れなく!」

「…は、はい!李順さん!」
「まったく、大人しく待っていればいいものを。こんなところまでついてこなくてもちゃんと土産は持って行ったのに」

「まともにお土産を持って帰ってきれくれたことなどないでしょう!今回はきちんと自分の分は自分で持って帰ります!」


そう、下町肉祭りではお土産を忘れられ、さくらんぼ狩りでは渡す瞬間に夕鈴がすっ転び、李順の頭にさくらんぼをぶちまけるという失態を犯してしまったのをどうやら根にもっているようだ。

「土産ごときで全く心が狭いなぁ」

「なんですって!大体陛下がいつも唐突に計画を立てるものだからいけないんですよ。
その度に政務の予定を変更する身になって頂きたいものです。
幼い頃からの陛下の無茶には慣れてますけど、今はそれに輪をかけて気苦労が増えましたからね!
お妃様!あなたも前もって計画を立てるようもっと陛下を説得していただかないと困りますよ。
妃たるもの、そのくらいは管理が出来なくてどうしますか!
そもそも陛下の我儘は今に始まった事じゃないのは分かっているじゃないですか!
うわっ!」

「李順さん!」


「いたたた…なんなんですか一体!…桃?」

なんだか延々とお説教が始まったと思ったところ、いきなり李順の背中に桃が降ってきた。しかもかなりの勢いで。これは結構痛い…

「熟れて落ちてきちゃったんですね。大丈夫ですか?李順さん…」

「…かなり痛かったですけど、それより衣が…」

結構痛かった上に熟れて皮が柔らかくなってた桃は、見事に潰れて李順の上着をびちゃびちゃに染めていた…

「いつもいつも…全くなんなんですかー!」

ムキーッと叫ぶ李順にもはやかける言葉はなかった。

ちゃんちゃん!


えーっと、これほんとにあったんですm(__)m
胸に桃が直撃でした。
山梨の桃って固いんですよ。(あ、行ったの山梨です)
んで、落ちてきてもべちゃべちゃにはなりせんので服は大丈夫だったんですけどね、痛いんです!
結構凶器になるんじゃないかって桃があちらこちらから落ちてきます。

方水コンビのお話もまた書きたいなぁ。
梨狩りはまた下町編にしようかな。

狩りシリーズ さくらんぼ狩り
2015年11月18日 (水) | 編集 |

友人4人と果物狩りをメインとする狩り部を結成しております。一年の間に色々な狩りをしているので、それをもとにお話を作りました。



「さくらんぼ狩り?」

「うん。この時期にたくさんなっていてね、僕も小さい頃にやってみたことがあるんだけど、北に行ってからはそういうこともなくなってすっかり忘れてたんだ。
せっかくだから夕鈴にも食べさせたいなーと思って」

「行きたいです!じゃあ早速皆さんで・・って、あっ!」

「いいのですよ。行ってらしてください。
政務を誰もしないでおくことは出来ませんからね。
私はいつものごとく留守番をしてます。」

「あ、あの!ちゃんと李順さんにもお土産持って来ますから」

「別にいいのですよ。無理やり気を使っていただかなくても。」

(いえ・・・その顔はいいって顔じゃありません。李順さん!)

以前下町の肉のお祭りにお忍びで行った際、
すっかり李順にお土産を買い忘れ、その後さんざん嫌味の応酬をうけたことを思い出し、今回は絶対持ってこようと夕鈴は固く心に誓った。



「水月、今回も家人を連れてきたのか?」

「それはそうだよ。僕は肉体労働には向いていないし
紅珠にもお土産を頼まれているからたくさん持って帰らないといけないし。
君こそまた一人で来たのかい?」

「ふん!前回とは違うからな。
下町のゴロツキどもに邪魔されることはない。
王宮管轄の果物畑なのだから別に家人がいなくても支障はあるまい」

「それじゃあ、今回はちゃんと李順殿にもお土産は用意しないとだよね」

「もちろんだろう」


「わー!すごい!一面さくらんぼの木なんですね。
こんなに食べたらお腹こわしちゃいそうです。
あ!青慎にもお土産もらっていいですか?」

「もちろん。後で二人で届けに行こう」

「嬉しいです」

そんな二人を微笑ましく遠くから見守りつつ、
同行した官吏や侍女達はそれぞれ自分達の分や土産の分を狩っていた。

「すっかりたくさんになりましたね。
こんなたくさんのさくらんぼなんて、青慎が見たら目を回しそう」

ふふっと笑う夕鈴の笑顔がまぶしくて
その小さな体を引き寄せ顎に手をかけると優しく口付けを落とした。

「へ、へへ、陛下!///
皆さんが見ているのになんてことを」

「大丈夫だよ。君は僕の妃なんだからおかしなことはないだろう」

「/// で、でも恥ずかしいです!」

そんな二人のことはもちろん周りのみんなは顔を赤らめて見ていたが、
陛下に睨まれては大変とまた自分達の作業に戻っていった。


「ふん!みんなの前で陛下にまとわりつくなど。
全くあの妃ははしたないことを」

「いや、今のは陛下の方からだったと思うけど。
なんにしても仲睦まじいことはいいことだと思うよ。
妹がいたらすぐにでも筆を持ちそうだけど。

それより方淵。李順殿にはこのくらいでいいかな?
君はどのくらい取った?」

「私はこのくらいだ。貴様は妹の分もあるのだろう。
私はあの馬鹿に渡すつもりはないからこれは全て李順殿に渡すつもりだ」

「お互い父親にはないんだね」

「父は別に欲しがらないだろうからな」



たくさんのお土産を抱えて王宮に戻った一行は政務室に向かった。
もちろん籠いっぱいにさくらんぼをのせて。

「おや、お戻りですか?
たくさんたべられたようで何よりですね。
ところでその籠は?」

「これは李順さんにお土産です。
いつも陛下の代わりに政務をこなしているのですから
こんな時くらいしかお礼が出来ませんが・・・」

分かりきったことを言わせるのもどうかと思うが(と陛下は心の中で思った)

「それは心遣いありがとうございます。
なんだか申し訳ありませんね。」

と言いつつ嬉しそうな李順に向かって侍女から籠を受け取って
夕鈴が手渡そうとした、その時

「あ!」

「危ない夕鈴!」

椅子に躓いて夕鈴は転びそうになってしまい、
寸でのところで陛下に抱きすくめられる。

「大丈夫だった?夕鈴」

「私は大丈夫です。・・・けど、あああああっ!」

夕鈴の手からこぼれた籠は李順に向かって飛んでおり、
なんと李順は頭からさくらんぼをかぶっていた・・・・・・・

「~~~~~お、き、さ、き、様!」

「あ、あ、あの、李順さん、そ、その・・・
ご、ごめんなさーい!」

水月はすぐさま逃げるように早退し、方淵は固まったまま動けず、
窓の外から一部始終を見ていた浩大は木の上で笑い転げていた。



肉フェスおまけの李順さん編
2015年11月16日 (月) | 編集 |

「…政務を放ったらかしにしたあげく、補佐官2人連れ出して、楽しいお忍びで何よりです!
ええ、その間もちろん私は地道に政務をこなしておりましたよ。
お楽しみの陛下の代わりにですね。
もう陛下恋しさのあまり死んでしまうのではないかと思う程でした。

そんな私の思いは当然長くお側にお使えした陛下のことですから、わかってくださるものと思っていましたよ。

お2人が、いえ、方淵、水月を含め4人が楽しく美味しいものを食べている間も私は食べることも出来ない状態で、このまま干からびていくのではないかとすら思いました。


で!そんな私にもちろんお土産を買って来て下さると信じておりましたよ。
それはそれはお優しいお妃様もご一緒だったんですからね!

いえ、私はいいんですよ。目先のエサにつられて仕事をしているわけではありませんからね。

しかしまさか、かくも優秀なる補佐官2名までもが、この側近たる私に対して何も買ってこないという選択をしたということが信じられなかっただけです!」



延々と続く嫌味…もとい、お説教はもうかれこれ半日近く続いていた。
もちろんその間陛下、夕鈴、方淵、水月4名は執務室に閉じ込められ、夕鈴以外の3人は政務を片付けながらありがたくもないお説教を聞かされ続けている。

「だから私はお土産を買って行くべきだと言ったのに君がいつまでたっても戻ってこないからお土産まで買う時間がなくなったんだよ。」

「何を言うか!それなら貴様が家人に命じて李順殿の分を買えば良かっただろう。」

「そこ!私語は慎む!
大体人の話を聞いていますか!
物事は最初から綿密かつ緻密な計画の元で行うことが鉄則です!…」


更に李順のお小言は続く。

水月は陛下と夕鈴に食べてもらうものを吟味していて、すっかり李順の分まで買う時間がなくなってしまい、土産は方淵に頼もうと思っていたところ、
その方淵は横入りしたゴロツキにお説教をしてはその隙にまた別のゴロツキに横入りされ、列は全く進まず、やっと買えた頃にはすっかり遅くなってもう1品買えるような時間はなくなっていたのだ。


お腹を空かせた狼にさぞ怒られるかと恐る恐る戻った2人だったが、陛下はというと、補佐官達が戻るまで夕鈴と2人っきりの時間を過ごせたことでとってもご機嫌で怒られることがなかった。

逆に水月は陛下が怒らない事が余計怖いと震え上がり、その後はひたすら無言で過ごしたため、お土産のことも言い出せなくなってしまった。



かくて、王宮に戻った途端、李順から嫌味の応酬をもらう羽目になったのである。



「いいですか!何度も言うようですが、陛下の勝手な行動の尻拭いは全て側近であるこの私に来るんです!
補佐官2人もこれからこの白陽を支えて行かなければならない存在にあるという自覚を持って、周りに気を配ることが出来なくては外交も任せることは出来ませんよ!
…」


まだまだ延々と続くお説教に1人何も出来ない夕鈴はひたすら下を向いて嵐が通り過ぎるのを願うことしか出来なかった。


この執念深さ、李順さんて蛇みたいと思ってしまったことは絶対にバレてはいけないと固く心に誓っていた。


・・・・・・・・・・・・


肉フェス
2015年11月16日 (月) | 編集 |
4/29日に東京の某所でやっている肉のイベントに行って参りました。
テレビで散々毎年ニュースになっているので一度食べに行きたいと思ったのですが、なにもこんな炎天下じゃなくても…
と後悔したのは会場ついてすぐ。


よりによって29=「にくの日」な訳で特別メニューだの多少大盛りだのだったしく、とんでもなく混んでいました。


それでも空いてそうなところを選んで並んだところ、なんと50分待ち…

ひどいところは1時間半から2時間待ちのお店もありました。


友達と3人で行ったのでそれぞれ別に並んで、後でシェアして食べたんですが、人数少ないと厳しいです。

でもステーキはやっぱり美味しかったですよ(^^)



というわけでそこから作ったお話です。


「すごい人ですね」
「そうだね」

「これじゃ何種類も食べられないから分かれて並びましょうね、陛下」
「え?やだよー。こんな人混みで離れたら危ないし、一人には出来ないよ」

「そんなこと言ったら1つしか食べられないじゃないですか!」


陛下と夕鈴じゃきっとこうなりますよね^^;

そして、これをSNSに投稿したらコメントから補佐官2人が一緒に行ったらというコメントがあり、そこからまたお話が派生しました。

では以下、続きです。


「なんで私達がこんなことに」
「仕方ないよ。陛下とお妃様を離したら明日の政務室がブリザードになるじゃないか。」
「ふんっ。こんなに暑いんだから寒い方がむしろ仕事がはかどるだろう」
「まぁまぁそう言わずに。じゃあ私はこちらを担当するから君はあちらをお願いするよ。」


方淵と水月は下町で行われている肉市に来ていた。年に一度の肉料理のお祭りを見たいと陛下と夕鈴がお忍びで来ているからである。
本来は護衛というか、お付きの意味で駆り出されたのであるが、何故か肉料理の調達をすることになった。


夕鈴が陛下と別の列に並んで別々の料理を分けて食べたいと言ったのに陛下が夕鈴のそばを離れなかったからである。


「全く!そもそもお妃が陛下を唆してこんな祭りに来るからいけないのだ。しかし混んでいるな。かなり並んでいるのに全く列が進まない。…って、おい!そこの男!今横入りしただろう!きちんと列に並んで買うべきではないか!」


「あー、兄ちゃん見たところどっかのいいとこの坊ちゃんだろうが、ここは下町だぁ。よそ者にとやかく言われる筋合いはない!」


「!なんだと!今私が並んでいるのは畏れ多くも…」


「はぁ?なんだって?」


「あ、いやなんでもない」


ここに狼陛下がお忍びで来てることを言うわけにはいかないと、ぐっとこらえながらも方淵は延々と説教を始め、結局その隙に別のゴロツキが横入りを始めたため、列は全く進んでいかなかった。
その頃水月は
「じゃ、頼むよ。なるべくいい肉を仕入れているお店を探すように。まさか何の肉だか分からないようなものをお2人に差し上げるわけにはいかないからね。私はそこの茶屋で休んでいるから」


「畏まりました。水月様」


「それにしてもこの暑い中方淵は自分で並んでいるんだろうか。家人を連れてきている様子はなかったし。
まあ、いいか。彼なら苦じゃないかもしれないしね。
私はこんな暑い中に立っていたら体調を崩して明日は政務どころではなくなるし。」
***********


「ゆーりーん♪こうして一つのものを2人で並んで買うのっていいね(^^)」


「もう!せっかくみんなで色々なものを食べたいと思ったのに」


「君は僕とそんなに離れたいの?僕は片時も君と離れてはいられないのに」


「ちょっっ///な、何言ってるんですか!こんな道の真ん中で!」


「えっ!手、手を離して下さい!恥ずかしいですったら!」


列の真ん中では手をつないでいちゃつく2人の姿があった。


「兄貴?どうしたんですか?」


「夕鈴と李翔の奴だ。相変わらず夕鈴にひっついてやがる。にしてもあれじゃ単なるバカップルだろうが」

七夕企画にて
2015年11月15日 (日) | 編集 |

これはSNSサイトでの企画に参加した時のSSです。
七夕になぞらえていくつかのキーワードの中から選んでお話にするというものでした。
何にしようか悩んだのですが、選んだキーワードは【羽衣】です。

【本物夫婦設定】
【天女の羽衣伝説が白陽国にもあった設定】
【陛下の両親に関して捏造があります】
【長いです!】



「お妃様、この度の隣国の大使を招いた宴ですが、お衣装はどういたしましょう?」
「そうね、新調することはないですから後宮に保管してある衣装の中から選びましょう」

侍女達は夕鈴の宴の衣装をどれにしようかとやたら張り切っている。
普段地味な装いしかしない夕鈴にここぞとばかり飾り立てようと後宮衣装保管庫からあれやこれや引っ張り出しては着せ替え人形よろしく次から次へと見立てていた。

ここ、後宮衣装保管庫には歴代の妃達の衣装が多数保管されている。
一度袖を通したものは着ないという主義であったため、ほとんど新品同様、中には仕立てたものの、違う妃と色が被っただのあの妃よりも最先端のデザインにしたいだのと、作った衣装を一度も着ないで別に作ったりした例も多数あることから新品のままの衣装も多い。

(もったいない!)
常々夕鈴はそう言って、出来るだけ新調せず、その中から選んで着るようにしていた。

色の重ね一つで見た感じが全く違うものになるので、ここは侍女の腕の見せ所と付き従っている侍女達もやりがいがあるらしく、半日かけて選んでいた。

立ちっぱなしでいた夕鈴はさすがに疲労が隠せず、貧血になりかけていたが
ふとあるものが目に入った。

「これ…すごくきれい!」
「まぁ、お妃様、どこで見つけたのですか?私共も初めて見ました。」
「そこの箱の一番下に入っていたの。確かに、隠すようにひっそりと入れられている感じだったけど」

それは薄い花の透かし模様が入った羽衣だった。
しかも見る角度によって色が変わって見える、七色の光沢のある生地で出来ていて、普段衣装にはあまり関心のない夕鈴も思わず目を奪われた。

「お妃様!それは・・・・・・」

「女官長さん、何か?」
「あ、いえ。なんでもありません。」

何か言いかけた女官長だったがはっと口をつぐみ、それ以上は話そうとせず、話題を変えてしまった。

「さぁさぁ、朝からずっとではお妃様が倒れてしまいますよ。
後は私達で選びましょう。お妃様は昼餉の支度が出来ております。
陛下もお越しになられるでしょうから、どうぞあちらへ」

(一体何かしら?何か知っているようだけど・・・)



その日は天気もよく、外の四阿での昼食となった。

「夕鈴、気に入った衣装はあった?
僕は新調してもいいと思うんだけど。今回は外交も兼ねてるし、
思い切って新調しない?」

「なんてもったいない!どれも素敵なんですよ。
全然袖を通してないものばかりで。私には十分すぎます。」
「ほんとに夕鈴はまじめだなぁ。少しくらい甘えてくれてもいいのに」

しょぼんと小犬の表情の黎翔を見た夕鈴は慌てて言った。

「あ、あの、とっても素敵な羽衣があったんです。
どなたのものかわからないんですが、あんなの羽織ったら素敵だなぁと思いました」

「羽衣?」

「ええ。七色に光ってすごくきれいなんです。
天女みたいで。でも私には似合わないかな」

「・・・・・・・・・・・・・・」
「陛下?」
「あ、いやなんでもない。」
「?」


**********************

その夜、なんか気になった夕鈴は女官長を自室に呼び、
羽衣のことを聞いてみた。
中々話そうとしなかった女官長だったが
夕鈴を見ると仕方なさそうに話し出してくれた。

「あの羽衣は、陛下の母君のものです。」
「陛下の?」

「はい。陛下の母君が先々王に初めてお会いした宴で
身に着けていた羽衣です。
すでに舞姫としての名声が高かった母君は陛下の御前で舞うのに失礼のないようにと精一杯の装いをして、それはそれは美しいものでした。
身に着けていた衣装の中でもあの羽衣は
舞姫様の舞があって更に輝いて見えたものです。
それが、陛下に見初められて後宮入りしてからというもの、
お気に入りだったはずの羽衣を身につけることはなくなって
どうしたのかと皆で話していたのを覚えています。
それが、なぜあんなところに。」

確かに、まるで隠すように衣装箱の下に入れてあった。
後で女官長に確認したところ、
その箱に入れあった他の衣装は陛下のお母様のものではなかったという。

政務を終えて帰ってきた黎翔に、思い切って夕鈴は尋ねることにした。



「あの羽衣はね・・・。」

真剣なまなざしになった黎翔は、何度も言いよどみ、
困ったような顔をしていたが、意を決して話し出した。

「母が初めて父の前で舞を舞ったときのものっていう話は聞いたと思うけど・・・その出し物が『天女の羽衣』だったんだ。

知っているかと思うけど、古い言い伝えで
地上に降り立った天女があまりに美しく、自分のそばから帰したくなかった人間の男が羽衣を取り上げて天界に帰さず、
天女を妻にしてしまったという話ね。

父はその伝説の通りに母を愛してしまった。
それでね、その羽衣を取り上げて隠してしまったんだ。
・・・母は天女じゃないのにね・・」
クスッと困ったように笑う。

「父としては羽衣を返したら母がどこかへ行ってしまうんじゃないかと思っていたらしい。
実際後宮は妃達の争いも多く、身分の低い母にとって
居心地のいい場所とは言えなかったから」

「陛下・・・・」

「ねぇ、夕鈴。僕は今でも君を妃にしてよかったのか。
もしかしたら君は陽の当たる場所で君らしく生きて行ったほうがよかったんじゃないかって葛藤することがある。

母の羽衣を取り上げて隠してしまった父に対して
幼い頃の僕は理解が出来ず、なぜ母を悲しませるようなことをするのかって思っていたんだけどね。
君を娶ってから、そんな父の思いが少しずつわかるようになった。

・・・夕鈴、ほんとは君は羽ばたきたいんじゃない?」

「陛下・・・私、陛下のお嫁さんになるって決めた時、
覚悟をしたって話はしましたよね。
それって、下町を捨てるとか家族に会うのを諦めるとか
そういう覚悟じゃないです!
あなたの傍で一生あなたを支えて生きる覚悟です!」

「夕鈴・・・!」

「陛下、私の帰る場所はいつだってあなたの元ですよ」

「・・・ありがとう。夕鈴」

**********************

後日の宴に夕鈴はその羽衣を羽織って出席した。
いつもと違って髪を結い上げ、胸元を大きく広げた衣装の首元にはきらめく翡翠の首飾り。
そして七色に光る羽衣はわずかに透け、
少女のような清楚さと人妻の艶を同居させた夕鈴の姿を更に魅力的に引き立たせていた。
それは隣国の大使に後に「白陽国には天女がいる」と言わしめたとか。

・・・・・・・・・・

小犬の黎翔さん 12
2015年11月15日 (日) | 編集 |

「…うーん、なんかよく寝た」
夕鈴は心地の良い暖かさで久しぶりによく眠れたような…と思って目を覚ました。

真夏の暑さは過ぎて、最近は夜は冷えるようになってきたから結構明け方寒くて目が覚めることが続いていたが、今日は一度も目覚めることがなく、朝までぐっすり眠ることが出来た。

はっと気がつくと、小犬が丸くなって胸元に抱きついている…というか夕鈴も抱きしめて寝ていた….。

「きゃー!」
「あ、夕鈴おはよ」
「お、おはよう…ございます///」

一瞬びっくりして大きな声を出してしまったが、よく考えたら昨日は紅珠が心配で、あの後、黎翔に自分が見たことをもう一度説明していて、きっとさらわれたに違いないと泣き出してしまった。
あんまりよく覚えてないが、黎翔の胸にしがみついて泣いたような…
その後彼に優しく抱きしめられて温かくてそのまま泣き疲れて寝ちゃった…のかも。

「夕鈴、もう大丈夫?」
「…あ、あの、すみません///
もう大丈夫です」

「落ち着いてよかった。紅珠のことは心配しなくていいよ。
とりあえずあのペットショップからは買い取ることした。ちょっと気になるから克右に偽名を使わせて交渉してもらってるからじきに本人に会えるだろう。」
「えっ!いつの間に…。」
「君はあの後ぐっすり眠ってしまったから、その後にちょっとね。」


かくて、午後にはペットショップでの引き渡しも終わり、無事に紅珠に会うことが出来た。

「さて、氾 紅珠。話してもらおうか。一体何があったのか」

まだぶるぶる震える紅珠を前に冷たい声と視線を投げかけつつ、黎翔は問いかけた。
途端にビクッとして、紅珠は余計に青ざめてしまったが、そこへ夕鈴が

「ちょっと!なんてこと言うんですか!長い間訳も分からずあんなとこに猫の姿で閉じ込められてたんですよ!
もうちょっと優しく出来ないんですか!詰問じゃあるまいし!
紅珠さん。今はまだ話せる状態じゃないと思うからお茶でも飲んでゆっくりしましょう。こっちへ来て!」

と、黎翔の前から連れ出してしまった。

とりあえず紅珠とは克右達が借りたホテルの一室で落ちあったのだが、そのまま夕鈴は彼女を自分のアパートまで連れてきて、2人で夕鈴の手作りクッキーと温かい紅茶でしばらくたわいもない話をすることにした。

最初は恐怖で震えていた紅珠だったが、黎翔の冷たい眼差しから連れ出してくれたことと、何も聞こうとしないで優しく微笑みかけてくれる夕鈴に次第に心が解れてくのを感じていた。

「…あの、ペットショップは瑠霞様の息がかかったところなんです。
白陽の人を何人も連れてきて、こっちの国の重要ポストに着いている人の家にペットとして送り込み、そこの弱みを見つけ出し、それを元に脅したり、窮地に追い込んだりすることで蒼玉コーポレーションの商談を有利に運んで行ってるみたいです。
相手はどこからそれが漏れたか分からない内に窮地に追い込まれたり逮捕されたりしてるって。」

「…それって、犯罪じゃないの!?それでどうしてあなたがあんなところに?」

「お父様が、どうやらその手伝いをしてるらしいって聞いちゃって…。
そしたら瑠霞様からお父様の手助けをしてあげなさいって、そしたら黎翔様の妃になれるように後押ししてくれるって言われて…
でも嫌って断ったんだけど、変身させられてあそこに連れて行かれてしまったの。
怖くて何も出来なくて…」

そう言うと紅珠は大泣きし始め、夕鈴は優しく抱きしめて落ち着くのを待った。

「もう大丈夫よ。お父様があなたを売るなんて、何かの間違いだわ。きっと今頃探してるんじゃないかしら?」
「わ、わからない。帰りたいけど、今帰ったら瑠霞様に見つかっちゃう」

「…じゃあ、落ち着くまで狭いけどここにいたらいいわ。
黎翔さんはホテルに泊まってもらえばいいんだし。私は学校とバイトがあって昼間は1人でゆっくりできると思うし」

「なんで!?なんでそんなに優しくしてくれるの?」
「だって私達お友達でしょ。」

と、夕鈴は当たり前でしょという感じでさらっと言った。

「…紅珠さん?どうしたの?」

「す、て、き!」
「へっ?」
「素敵ですわ!わたくし、感動しました。お姉様こそ、至高の愛を持つ方、わたくし、今までなんという勘違いを。これこそが愛ですわね!」
「はいぃ?あ、愛って、何言って…」
「わたくし、今まで本当の愛ってどういうことか分からなくて、瑠霞様から言われてもピンと来なかったんです。
黎翔様に対する想いが愛なのかと思っていましたけど、あの方に対してこんな気持ちを感じることはありませんでした。
お姉様こそ、黎翔様に相応しいですわ。わたくし、一生お仕え致します!」

「ちょっ、何言って。」

なんだかよくわからないが、自分は彼女に好かれたらしい。
それだけは分かったけど、一生仕えるって一体なんだ!
と心の中で盛大に叫ぶ夕鈴だった。

小犬の黎翔さん 番外編 出会い編
2015年11月15日 (日) | 編集 |

父、弟と3人家族の汀 夕鈴は17歳の高校生。
実家は田舎にあるが、父は地方公務員で昔からそんなに裕福じゃないので、高校から一人暮らしを始めて、都心でバイトをしながら学校に通っていた。
もちろん、必要最低限の生活費以外は全て実家に仕送りしているため、クラスメイトと放課後にお茶をしたり部活を楽しんだりすることもなくいたって地味な生活だった。

でも生来の明るい性格や真っ直ぐで優しいことからみんなから好かれていて、密かに恋心を向けられることも少なくない。

が、全く恋愛に興味もなく、免疫もなかったので、そういう好意に気づかず、知らない内にスルーされて打ちのめされている男子生徒も少なくなかった。


「夕鈴ちやん、パンそろそろ焼きあがるから、棚空けといて!」
「はい、店長もう空いてます」
「さすがだね。夕鈴ちゃんがバイトに来てくれてからほんと大助かりだよ。
こっちが言うより先にテキパキ気づいて動いてくれるんだから、うちの息子の嫁にほしいもんだね。」
「…店長の息子さんって確かまだ小学生ですよね(^^;;」
「まあまあ、そうだったらいいなってことよ。」

とこんな毎日を送っていた。

「さて、今日は売れ行きもよかったから片付けも早く済んだし、久しぶりにシチューとか煮込み料理作り置きしちゃおうかな。あれ?
なんだろう?」


************


一方の白陽国王宮

「陛下、また縁談のお話が来ましたよ。」
「今月何回目だ。いくら言われても妃を娶るつもりはない!
適当に処理しておけ、李順」
「御意。まぁこの大臣の弱味は握ってますからね。それをちらつかせて破談にしておきますよ。
ところで、陛下、どちらへ?」

「最近縁談が多いからな。ちょっと身を隠す。後は上手くやっておけ」

「え、陛下!お待ちください。ってもういない。全くあの方にも困りますね。浩大、頼みましたよ。」
「はーい」
と、いうと浩大は鳥を呼び、自身は小さなカエルに身を変えて鳥に飛び乗り、陛下の後を追って行った。
隠密である浩大は普段は身を隠すためにカメレオンになって潜伏してることも多いが、身軽に動きたい時にはより小さなカエルに変身することが多い。

変身術は幼い頃からみな励んでいるが、大体が犬や猫などの動物で1種類しか出来ない場合が多い。
それに比べると、浩大は隠密として、幼い頃から励んでいたため、複数に姿を変えることが出来た。
元来の体の大きさからあまり大きな物には変身出来ないが…。

黎翔は二つ名の狼の名の通り、狼犬を先祖とするシベリアハスキーになることが殆どだが、時として雑種の小犬の姿にもなれる。ただし、このことを知る人は多くない。

白陽国とある1点でつながる別世界、それが夕鈴が住む世界である。
文明は白陽国よりも進んでいることもあり、しばしば勉強の為にと犬や猫に姿を変えて来るものも多い。
黎翔はそんな者達の監視の意味も込めて、お忍びと称して度々こちらにやってきていた。

そして忘れられない場面に遭遇することとなった。

こちらにやってきてすぐに大型の紀州犬に幼い女の子が吠えられているところに出くわした。

(あれは・・・柳家の長男ではないか。
またあいつは弱いものいじめでもしているのだろうが、いくらなんでも相手が子供とは、情けない奴だ。出て行って止めるにしても私が姿を現せば公に罰することになってしまうし、奴は一応あの柳家の長男。
浩大が戻ってくるまで様子を見るか)

と思い、手を出すことが出来なかった。
今にも幼い女の子に飛び掛ろうとしていたその時、

「こらー!そこの犬!離れなさい!」と威勢のいい声がかかり
大根を片手にブンブン振り回しながら駆けつけてきた女の子がいた。
夕鈴だった。
前足で立てば夕鈴など一蹴りで吹っ飛んでしまいそうなほどの大型犬を前にして、勇敢にも犬と女の子の間に入り、持っていた大根でボカボカ頭を殴りだしたのだった。

まさか女子高生に殴られるとはと不意をつかれた柳 経倬はまともに頭にくらってしまい、あまりの痛さに逃げ出した。

「大丈夫だった?あんな大きな犬に何したの?」
「・・・あのワンちゃん、これを盗ろうとしたから。
これは神様にお供えしようとあの神社に持って行って置いたら
横から持っていかれそうになって・・・慌てて石を投げつけたら追いかけてきたの」
「ひどい犬ね。でももう大丈夫よ。さ、お家まで送っていくわ。帰りましょう。」

そう言って手をつないだが反対側の手はがたがたと震えていて、夢中だったからわからなかったけど、夕鈴は自分も怖かったんだと今更ながらに気が付いた。

そんな一部始終を目撃することになった黎翔は驚きとその勇気にすっかり魅入ってしまう。

「あんな勇気のある子、初めてだ」

それから気になって後をつけて行ったが、幸い、経倬はもうどこかへ行ってしまったらしく、逆恨みして襲ってくることはなかった。
それでも心配になり、数日は彼女の様子を見守ることにした。

毎日様子を見ているうちに
夕鈴のくるくる変わる表情やてきぱきと働く姿、そしてやさしい笑顔にどんどん惹かれていくことに気づいた。

自分にもあの笑顔を向けてくれたらどんなにいいだろう・・・
そう思った時が初恋の瞬間だった。

それから数ヵ月後に小犬の姿で夕鈴の家まで付いていくことになる。

しかし夕鈴が黎翔に対して同じ想いを持ってくれるまでにはまだまだ時が必要だった。



**********************

うーん。これではストーカー小犬の誕生物語ではないかと自分で思ってしまいましたが・・・どうなんだろう。


小犬の黎翔さん 11
2015年11月15日 (日) | 編集 |

「れ、黎翔さん…」
「夕鈴、何があった?」

突然現れた黎翔だったが、夕鈴はポロポロと涙を流してすがりついてしまった。
「あ、あそこのペットショップに紅珠さんがいたの!どうしよう!絶対攫われたに違いないの。お願い、助けて」

夕鈴がこんな風にすがりついてくれるなんて思ってなかったので一瞬びっくりして固まってしまったが、夕鈴に嫌われたと思っていた黎翔は紅珠には悪いが嬉しくなってしまった。

その様子を見つつ、そろっと場を離れようとしていた浩大だったが、そうはさせてもらえなかった。

「どこへ行く?浩大。お前のことだ。すでに調べはついてるんだろう。報告しろ。
さっきのことはそれによっては帳消しにしてやる」

(って、目が怖いんですけど、陛下!
さっきのことって、別に俺は何もしてないよ。ただ、夕鈴ちゃんが泣き出しただけじゃん)

心の中の叫びをこらえつつ、逃げ出せなくなった浩大はこの後のとばっちりを覚悟した。



「あのペットショップどうも裏があるようだ。
ここ数年で突然チェーン店を増やして大きくなったんだけどね、その広がりようが異常なほどでね。調べてみたら、こっちの世界に嫁いできた陛下の叔母君の夫の会社が出資してる子会社っぽい。」

「叔母上が関わってるってことか?」

「まだそこまではわからない。でもなーんか嫌な予感はするよ。最近氾大臣がこっちに来てるのと関係あるのかとも思ったんだけどさ、まさか自分の娘を売ることはないだろうからそこは疑問なんだけどね。
あとは軍人さんの報告待ちかな」

「軍人さん?あと、黎翔さんの叔母様って?」

「ああ、軍部にいる部下がね、僕と入れ替わりにこっちに来てるんだよ。
ちょっと調べてもらってるんだ。
元々氾 紅珠の父親がこっちに来てたのはどうやら叔母上に会ってるらしいのはわかってたんだけど、目的がわからなくてね。
叔母上は周囲の反対を押し切って、こっちの世界の義兄の元に嫁いで来たんだ。今じゃ蒼玉コーポレーションの社長夫人として手広く活躍してるみたいだけどね。」

「蒼玉コーポレーションって!あの大企業の!すごい…」

「元々さ、瑠霞姫っていったら周りを振り回す天才っていうか、なんていうかすごいパワー溢れるっていうか、若い頃から有名でね。
こうと決めたら引かない性格だし。ま、多分色々強引な手も使ってるんじゃないかな。
陛下のことも子供扱いだし、ちょっと太刀打ちするには難しい相手だよね。」

夕鈴の部屋で話していたが、不意にその時部屋のドアがノックされた。

「あれ?うちに訪ねてくる人なんて滅多にいないのに。」
「ああ、報告が来たんじゃないかな」
「えっ?」

とりあえず夕鈴が出ようとすると、黎翔が手で制してドアを開けに行く。するとそこには長身の男性。

「待ってたぞ。克右。掴めたんだろうな。」

「はい。全容解明とは行きませんでしたが、最近、蒼玉コーポレーションはペットビジネスに力を入れてまして、どうもそれに氾大臣が関わってるらしいですね。」

軍人さんという徐 克右の話によると、
上流家庭向けの高級犬や猫を取り扱っているのだが、1ヶ月検診やトリミングといったアフターサービスも完備されていて、財界などの著名人の顧客もたくさんいるらしい。

「ただ、それまではいいんですが、どうも変な噂もあるんです。
検診やトリミングに出した後に少しペットの様子が変わったとか、まるで別の犬や猫になったみたいだということが多いらしいんですよ。
そこは慣れない家でのストレスだとかそういう説明で納得はされてるみたいなんですが、いくつか消費者センターに苦情が入っているらしく、調査に乗り出そうとすると、相手から取り下げ要請が入ったり、その家のスキャンダルが発覚してうやむやになったりということがあるらしいです。ただ、そういったことが起こる度に会社が小さくなるどころか、噂に反比例するように会社自体は大きくなるらしいんです。
なんか怪しいんですよね。」

「確かにそうだな。で、そのからくりはわかったのか。お前のことだ。それだけの報告でわざわざ顔を出しには来ないだろう。」

「ははっ、さすがですね。
まぁ、まだ詳しいところはわかりませんが、ただ一つわかったことがあります。
大手企業や政財界、芸能人などの著名人のところにもらわれていった犬猫ばかりが検診のあとに変わってしまったんじゃないかという噂が出るんですよ。
で、つい先日、その中の家族の一人に会うことが出来たんですが、それまでの犬とは確実に違う犬だっていうんですよ。
どうもそこの家の子供がいたずらをしたらしく、尻尾の先を毛染めでちょっと染めちゃったらしいんですね。
すぐに風呂にいれたけど先の少しだけ残ったらしく、よく見たらわかるようだったらしいんですが、検診後に戻って来た犬はそれがなかったらしく、また、名前を呼んでも反応がなくて、全く別の犬にすり替わったと。
まぁ、今の犬もすぐに懐いたらしく子供が可愛がってるからいいかということにはなったらしいです。」

「すり替えか…最近氾のとこにやたら出入りしてた貴族もしばらくの間向こうで姿を見なかったな。
……浩大!そいつらの変身後の犬種を調べろ。まさかとは思うが、気にかかる。克右は蒼玉コーポレーションと叔母上をもう少し見張れ」

「はっ!」
「OK!で、陛下は?一旦帰るのか?」
「いや、今回の件は白陽国の奴らが関わってるなら調べなきゃならない重要事項だ。
しばらくこっちにいる。夕鈴に迷惑はかけられないからどこかホテルでも探すか」

「あ、あの!」

と、それまで口をはさめなかった夕鈴が慌てて言った。

「あの、黎翔さん、その、よかったらまたうちにいませんか…?
紅珠さんも心配なので一刻も早く助けたいです。彼女はこの件に関わってるとは思いません。何かに巻き込まれたんじゃないかと思うんです。だから!」

「君に助けを求めるようなフリをして騙しているのかもしれないよ。」
「そんなことありません!目を見ればわかります。あれは騙しているような目じゃありませんでした。」
「…わかった。じゃあ、氾紅珠については僕が調べよう。ただ、ほんとにここにいていいの?もう怒ってない?」

「あ、あれは…私も一方的に怒ったりして、悪かったと思ってます。で、でも、夜はやっぱり小犬でいて下さい!///」

「うん、わかった。ありがとう、夕鈴♪」
そう言うと、キャンって声が聞こえそうな勢いで抱きついてきた。

「ちょっ…だからそういうことはやめてくださいってば!///」
「あ、ごめん」

とりあえずは夕鈴のそばにいられることに満足しておこう。
この件を片付けることが出来たら、また彼女にアプローチすればいい。

そんなことを黎翔が考えているとも知らず、ほんとに小犬の姿に変わってパタパタ尻尾をふるのを見ていたらどうしても警戒心がなくなってしまう夕鈴だった…

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