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狼.陛下の花.嫁の二次創作です
小犬の黎翔さん 13
2015年12月09日 (水) | 編集 |

「夕鈴お姉様。今日は何時頃お帰りになります?」
「あ、えっと、紅珠?お姉様っていうのは…」
「ダメですの?わたくし、兄ばかりなのでずっとお姉様が欲しかったんです…」

ショボンとうなだれて上目遣いに見る紅珠に、かわいいい!っと夕鈴はすぐに折れてしまった。

「あの、その、じゃあ外ではそんな風に呼ばないでくれたら…」

うるうる涙をためていた紅珠はぱあぁっと顔を輝かせて満面の笑顔になった。
(…なんか、こういうとこって黎翔さんの小犬の時と似てる…)

紅珠を助けてからというもの、すっかり懐かれてしまい、黎翔はホテルに追いやったが、代わりに紅珠と暮らすことになった。

女の子だから昼も夜も猫の姿にならなくても一緒の部屋にいられるし、そういう意味では黎翔よりは楽だが、なんとなく、小犬が子猫になっただけで変わりはないような…と思わなくもない。

一方の黎翔はというと、
「全く!助けたのは私なのにどうして追い出されるんだ!」
「…そりゃ、陛下が氾のお嬢ちゃんのこと怒鳴りつけたから夕鈴ちゃんが怒っちゃったんでしょ。自業自得ってことで…うわわっ!」

浩大が面白そうに言った途端顔をかすめるように小刀が飛んでくる。

「あっぶねー。そんなに気になるなら謝りに行ってくればいいのに」
「そんなことは分かってる」

(…ふーん、拒絶されるのが怖くて二の足踏んでるってとこか。こりゃ、結構夕鈴ちゃんのこと本気だね。面白れー)

ホテルの部屋でもやもや悩んでたが、こうしていても仕方がないと夕鈴のアパートに向かった。

(いきなり行っても夕鈴怒ってるかもしれないし、外から様子を見るだけでも…)

そう思ってアパートに近づくとちょうど夕鈴が紅珠と一緒に出てくるところだった。
思わず建物の脇に隠れて様子を伺っていると、実の姉妹のように楽しそうにしていて、その夕鈴の笑顔は自分にはまだ向けてくれたことがない、いつもパン屋で働いている夕鈴を見ていて好きになったあの笑顔だということに気づいた。

(自分には向けてくれない笑顔をもう紅珠には見せてるんだ…)

なんだかとてつもなく寂しくなり、そのまま小犬の姿になってとぼとぼと帰って行った。

「あらっ?」
夕鈴は一瞬だが小犬の後姿が目に入り、ふと足を止める。

「どうかなさいまして?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと待ってて」
と、紅珠を残し慌てて後を追ってみたが、もう姿はなかった。

「黎翔さん…?」

「お姉様?」
「ああごめんなさい。何でもないわ。さ、お買い物にいきましょう。それより、ダメよ紅珠。外では名前で呼んでって言ったじゃない」
「ふふっ、私ったらつい嬉しくて。では参りましょう。夕鈴さん」

しばらく夕鈴の家に同居することにした紅珠は身の回りの品を揃えるため、夕鈴と買い物に出ることになった。
紅珠はこちらの世界に来たことはあってもたいてい父と一緒だったりで友達がいるわけでもないのでこんな風に街の中をショッピングするのは初めてで、とってもウキウキしていた。

夕鈴も今日は土曜で学校も早く終わり、まだバイト先が休みのため、まだ外に出るのはどうかと思ったが、思い切って紅珠を連れ出したのは正解だったかなと少しホッとした。


****************


その頃黎翔は蒼玉コーポレーションの本社ビルに来ていた。
叔母である瑠霞は社長夫人にして役員もしているため、幅広く経営にも携わっており、ビルの最上階に自分の執務室を持っていた。

部屋に入ると、全く驚いた様子も見せず、微笑んで座っていた。

「そろそろ来ると思ってたわ」
「…でしょうね。もちろん来た理由も分かってるんですよね?」
黎翔も冷ややかな微笑みを浮かべる。

「…そうね。でもあなただってわざわざ聞かなくても既に調べはついてるんでしょう?
白陽国から罪に問われるようなことはしてないわよ。もちろんあなたに迷惑をかけることも。
まぁこっちではちょっと犯罪まがいなことはあったとしても、ペットとして買ってきた犬や猫が実は人間で皆さんの悪事や弱味をにぎらせてもらいましたなんて誰も信じないし、ね。」

と無邪気にも見える笑顔で答えた。

(相変わらず喰えない叔母だ。一体何を考えているのか…)

「あらあら、そんなに怖い顔で睨まないでよ。あなたの大事な夕鈴さんには何もしてないわよ。それどころか今頃あの2人は仲良くなってるんじゃない?
あなたは紅珠と結婚する気はなさそうだったし、紅珠が諦めてくれたなら結果的によかったんじゃなくて?」

「…見張ってるというわけか」
「まぁ嫌ね。見守ってるって言ってほしいわ。別にね、私はどちらの味方でもなかったけど、あなたがそんなにも執着してるなんて珍しいじゃない。
それなのにあの子はまだあなたのことを好きになってないみたいだし、あなたが紅珠とくっつくより、あの子をどう落としていくのか見てみたくなったの。単なる好奇心ってとこかしら。
あら怖い。だから睨まないでよ」

「いいか、今後は手出ししたら許さないからそのつもりでいるんだな。
ところで、今回の一件は氾大臣も関わってるのか?」

「いいえ。何をしてるか分かってはいるでしょうけどそこは不問にして人を貸してもらってただけよ。彼もこちらの世界で味方を作っておきたいみたいだったし、ギブアンドテイクってとこかしら」

「氾 紅珠のことについては?」
「ああ、…それはね、内緒なの。さすがに何日もだったらまずいと思ったけど、あなたがすぐ助けるだろうと思ったし、問い詰められたら夕鈴さんに会いに行ってることにしようと。
でも実際そうなったんだし。だからこれだけは彼には言わないでね」

勝手な言い分に腹が立ったがすべてその通りに行っているあたり、さすがは大企業の経営に携わっているだけはある。
下手に手を出しても先回りされる可能性が高い。

敵にはしない方がいいってことか。
だが、夕鈴に手出しをしたらただじゃおかない。
そう強く誓ってオフィスを後にする。

(でもまずは夕鈴に許してもらうのが先だよな…僕の入る隙間あるんだろうか…)

ふと現実に帰った時、今までギラギラした目つきで威嚇をしていたとは思えないほど、ションボリと肩を落とし、また元来た道を戻っていった。

「ゆーりーん、僕にも笑ってくれないかなぁ…」

(続く)
*****************

今回は最初の女の子2人の仲良しさんとショボーンとした小犬さんを書きたかった…

かっこいいのか残念なのか、夕鈴に笑顔を向けてもらえるようになるにはまだ時間がかかるのか…な?




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