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狼.陛下の花.嫁の二次創作です
小犬の黎翔さん 8
2015年11月14日 (土) | 編集 |

黎翔が白陽国に戻ってから1週間が過ぎていた。
夕鈴は今までのように学校とバイトの往復の日々を送っている。
今までと全く変わりがないようで、一つだけ変わったことがある。
それは時折バイト先に現れるペルシャ猫。
現れるといっても、こっそり外から覗いているだけなのだが…
多分本人は気づかれてるとは思ってないようだが、何しろペルシャ猫。
野良猫のようにどこにでもいる猫ではないので、嫌でも人の注目を集めてしまう。

「夕鈴ちゃん、見て!またあのかわいい猫来てるわよ。最近よく見かけるようになったわよね。一体どこの家の猫かしら」
「…そうですよね。どこですかねー。」
と適当な返事をしてみたが、夕鈴としては正体が分かっているのでどうしていいのか分からなかった。

「確か、紅珠といったかしら。」
その日の帰りに夕鈴は思い切って話してみることにした。

バイトが終わって外に出た夕鈴はどこかで様子を伺っているだろうペルシャ猫を探したが、今日は姿が見えない。
「あら?今日はもう帰ったのかな」

少しその辺を探してみたが見当たらない。
きっと帰ったんだと今日話すのは諦めて家に帰った。

その後ろ姿を通りの向こうから眺めている人がいることには気づかない。

「あの子ね。甥っ子が執着してる子って。
中々かわいいわね。ウフ」
「あの、瑠霞様、どうして…?」
「ダメよ。あからさまに様子を見に行ったりしたら。
さっきだってあなたを探してたみたいじゃない。何の策もないのに相手に対峙したって無謀なだけよ。紅珠」

道の反対側に停まっている車の中で夕鈴が帰る姿を確認し、瑠霞はそのまま後は追わずに車を走らせた。

「あの…瑠霞様は私の結婚を後押ししてくれるんですよね?」

不安になった紅珠は聞いてみたが、瑠霞は一瞬驚いた顔をして、その後に笑い出した。

「ウフフ。かわいいわね。
ね、紅珠はどうして黎翔と結婚したいの?」

「それはっ…!だって幼い頃からお父様にそう言われて、私もそのつもりでずっといたし、
そのために努力だって」
「努力ね、それは書物を読んだり、楽を身につけたりってことよね。それって一体何の努力なのかしら?
はっきり言って、つまらないわね!」
「!!」

「黎翔があなたとの結婚ではなくて、ただの人間の女の子を好きになった方が私は興味あるわ。
もちろん、あなたは魅力的な子よ、紅珠。
将来正妃になったら何の問題もなくあの子に寄り添えるでしょうね。
でもね、愛ってそういうことじゃないのよ。」

「…愛?」
「そう、愛。ウフ。まだ早すぎるのかしら。
私は今のところどっちの味方でもないわよ。私が興味あるのは燃えるような愛なの。
あなたも早く愛に目覚めてほしいわ。
そろそろ退屈だし、恋愛の三角関係なんてすごく楽しそうだからしばらく様子を見させてもらうわね。頑張って!」

家まで送ってもらった紅珠は瑠霞の言葉が頭から離れなかった。

「…愛ってなんですの?」


****************************


「今日は話せなかったけど、あんなキレイなペルシャ猫なんて、フラフラしてたら絶対誰かに攫われちゃいそう。
うん!明日こそ話してもう来ないようにしてもらわなきゃ。
黎翔さんの恋人って勘違いされたままじゃ困るし」

「それにしても、黎翔さん、ちゃんとご飯食べてるのかな…」

「あ、だいじょーぶ!陛下ならあっちの世界に戻ってるよ。ちゃんと寝てるかは保証出来ないけどご飯は王様だからね。豪華なもの食べてるはずだよ」

「きゃっ!」
いきなり声がしてびっくりして振り向くと、窓の外の木に小柄な男性の姿。

「あ、ごめんごめん。この姿初めてだっけね。
俺は浩大。陛下の隠密だよ」

「陛下の、ああ、そういえば前に」
「そうそう。でさ、なんか食いもんない?」

いきなり部屋に入ってきて食べ物をねだる浩大に
最初は驚いたけど、彼の親しみやすい容姿とか物言いにすっかり警戒を解いた夕鈴は夕飯をごちそうしてあげた。

黎翔は白陽国に戻っていて
たまりまくった政務を片付けることでほぼ側近の李順の監視下にあり、
抜け出してこっちの世界に来ることは今のところ無理らしい。

「そんなに大変なの?ちゃんと睡眠は取れるのかしら?」
「あれ?夕鈴ちゃん、心配してるの?」

意味ありげにへらへら笑う浩大に真っ赤になって否定する。

「そ、そんな変な意味じゃないわよ!
知らない人じゃないんだし。お仕事で忙しいって聞いたら
普通は心配するじゃない」

「フーン・・・まぁそういうことにしといていいけど。
あの人がアンタのこと気に入ったのなんか分かった気がする」
「えっ?」

「あの人はさ。王様だから仕事をするのは当たり前で。
心配されるのは政務をきちんとするかってことばっかりでさ。
誰もあの人自身の心配なんかしないわけ。

今んとこ、後継ぎがいないから表面上はみんな心配してるけどさ。
皆にとって必要なのは王様であって、別にあの人じゃなくてもいいからね」

「そんな!何それ!おかしいじゃない!」

「だからアンタみたいな人は貴重なんだよ。
あの人もそんなところが気に入ったんじゃねーの?」

「そんなに話したことなかったけど・・・
いきなり好きだとか言われたし///」

「まぁその内わかるよ。アンタみたいな人はいないからね。
目を見ればわかるさ。
今まであの人の周りは敵だらけだったから。
上辺だけ取り繕ってるのとそうでないのはさ。
んじゃ、また来るわ。ごちそーさん」

そう言って彼はひらりと窓の外から出てってしまった。

「ちょっ・・・ここ2階!ってあれ?もういない・・・」

「黎翔さん・・・周りは敵だらけって・・・
お友達とかもいないの?そんなのって」

夕鈴はなんとなく気になってその夜はなぜか彼のことばっかり考えていた。
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